GOLD RIDER vol.01 :齋藤紀幸 エムジーマリーン PW安全協会 TPSP Tokyo Pwc Safety Project

INTERVIEW

GOLD RIDER vol.01 :齋藤紀幸

2016.08.10

エムジーマリーン株式会社 代表取締役、パーソナルウォータークラフト(PW)安全協会 東京支部長として
マリンスポーツ・マリンレジャーの健全な発展を牽引している齋藤紀幸さん。

現在、女性にやさしいマリーナ運営や、
TPSP(東京港・湾・河川 水上オートバイ安全航行推進プロジェクト)の活動に注力する齋藤さんに
水上オートバイの魅力、安全についてお話を伺いました。

本当楽しいし、おもいしろいし、
普及させたいなという一心で今までやってきた

GOLD RIDER vol.01 :齋藤紀幸 エムジーマリーン PW安全協会 TPSP Tokyo Pwc Safety Project

ー水上オートバイに出会ったのはいつ頃ですか?

水上バイクに出会ったのはアメリカの会社マリン
(アウトボードマリンインターナショナル)で修行をしていた時、1979年ですね。
5月にロングビーチで「JS440」という初期のモデルに乗る機会があって、
まだ日本では発売もされていなかったし、輸入もされていなかった。
日本に帰ってきて1980年に水上バイクの中古機を輸入し、
仲間を作ってやっているうちに翌年、KAWASAKIジェットスキーの販売が始まり、
実質、商売として本格的に始まったのが1981年ですね。
翌年の1982年に日本ジェットスキー協会(JJSBA)を立ちあげて、自分も理事に就任して、
第一回の大会が1982年11月に下田で公式レースをはじめて行い、
その時自分も全日本で2位ということで
翌年からゼッケン2番をつけて走ってまして、
それを10年くらい続けてましたかね。

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ー最初にアメリカでジェットスキーを見た時の印象は?

本当にカルチャーショックでしたね。それまでマリンスポーツといえばモーターボートか、
ダイビングか、サーフィンか、まだウインドサーフィンもなかったからね、この頃。
ですから、ジェットスキーは衝撃的でした。
一人乗りで、70kmくらいスピードも出てたし、革命的でしたね。
それに興味もってやっていたら日本でも発売することになって
僕も修行の身からこの会社に専務という立場で入ったので、
同時に販売店としてもスタートし、プロライダーとしてもスタートしたというのが経緯ですね。
どちらかというと商売でモノ売るよりも、好きで輸入して最初始めてたので、
ユーザーの目線から入ってるんですよね。商売の目線よりもね。
本当楽しいし、おもいしろいし、普及させたいなという一心で今までやってきたので。

情熱を持ってやってきている連中が全国にいる
交流がてらツーリングを一緒にやるのが楽しい

ー楽しいという、水上オートバイの魅力とは?

こんな小さな乗り物で、当時でも立ち乗りで70km位スピードが出たし、
今も市販のランナバウトで120kmくらい出る時代になったけど、
基本的には安全とルールさえ守れば楽しく走れる乗り物。
年々、大型化してきて、小型ボートと同じくらいの航行範囲で楽しめるようになったし、
エムジーマリーンでいえば、横浜往復くらいは当たり前に水上バイクで楽しんでいるし、
航行範囲も広がっている。
またトレーラーの普及によって、つい先週もエムジーマリーンの企画で
日本三景の1つの仙台の松島まで3連休を使って14~15台で行ったんです。
ここからトレーラーを引っ張っていって、仲間のマリーナで降ろしてもらって、
地元の人たちに先導をガイドしてもらって、
安全で楽しいツーリングを地方でもやろうということをやっている。
新潟にも行っているし、西伊豆とか千葉方面はもちろんですけど、あちこちに行ける。
ボート以上に手軽に牽引ができるので、楽しみやすい。
レースをやっている人はもちろん、トラックに積んだり、
トレーラーで引っぱって全国でレースをやっているけど、
僕の時代でも全国、青森から沖縄までレースがあったからね。
自分も、年間で15戦出ていましたから、日本三景の広島宮島でもレースやったし、
三保の松原でもやったし、全国の仲間と今でも付き合っているし、
レースの創世記からレースをやっていたユーザーだったり、
また販売店の仲間だったり、みんな情熱を持ってやってきている連中が全国にいるので、
そういう人たちに受け入れてもらって、交流がてらツーリングを一緒にやるのが楽しいですね。
水上バイクはあちこちで乗れる、また移動して楽しめるというもう1つの魅力があるんじゃないですか。
ボートを移動させようとしたら走っていくのも大変だし、陸送するのも大変じゃないですか。
水上バイクだとトラックに載せたり、トレーラーで引っ張ってたり気軽にできるようになってきたので、
2台積みのトレーラーも一般の人でも引っ張っていたり、牽引免許をとる人も増えています。

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ダメダメダメとなってきている状況を
なんとか食い止めようというのがTPSP

1990年にPW安全協会が立ち上がったんですよね。
自分も東京支部長になって、それ以来ずっとやってますから、もう26年目。
海上保安庁で主導している協議会のなかで
20数年、水上バイクが悪者扱いされないで、とにかく安全にルールを守ってやっていくので、
共存・共栄させてほしいと言い続けてきたけれども、
現実として事故とか、一部の不法者によって地元に迷惑をかけてしまっている。
例えば、スカイツリーに入っていく小名木川、十間川は水上バイク航行禁止になって、
一部の不法者のせいで、危ないという理由で、条例が作られてしまった。
もっと遡れば、20年前までは葛西臨海公園だって浜に上陸できたし、
自由にトイレも利用できて、上陸してBBQをやったり、食事を売店で食べたりできたんですよ。
台数が増えてきて、ワイワイやって浜にいる子どもたちに水掛けたとか、
水上バイクだけでなくて、ウェイクボードのボートの引き波が危ない、
自然保護の問題などいろいろな経緯があったが、
結局、東京都の公園条例でダメになった。

ダメダメダメとなってきている状況を
なんとか食い止めようというのがTPSPで、
このまま放っておいたら、どんどん走れる所が少なくなってきて、
規制もされて、それによって禁止の看板つけられて、
東京でそういう風になっていくと全国で波及していきますから、
逆に東京でいい方向になれば、
それが全国に波及していくだろうということで、
今、TPSPが東京で成功すれば名古屋港、大阪港にも広がる。
港湾、河川は大なり小なり全国は同じ悩みを抱えていますから
いい前例に東京のTPSPがなったらいい。
みんな見守ってくれていると思います。

TPSPをスタートしてなければ、
夢の島マリーナも去年くらいで乗り入れ禁止になっていました

優良ライダーを育成して、ビブスを着て社会的に優良ライダーを認知してもらうこと、
可視化しないと誰が優良か、誰が講習を受けたかを理解されない。
我々が優良ライダー増えていますと口で言ったって
それが目に見えるに形にならなければ何にもならないじゃないですか。
判断するのは一般の人だし、もしくは取り締まりを行う水上警察だったり海上保安部だったり、
その人たちに見えるようにしなかったら、我々の活動って何をやっているか理解されない。
そのためのビブスなんですね。

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着る人は自分たちは優良ライダーだと意識を高めて、
プライドをもって着てほしいと思っているんですよね。
そういう人が一人でも多くなって、模範ライダーという意識で安全に走ってもらえれば
東京から水上バイクの見方が変わってくる。
例えば、講習を受けてもらわないと、徐行の意味がわからない、
スピードを落とせば徐行ではなく、
中途半端にスピードを落とすと余計引き波が出るしね、
迷惑をかけたくなくても、現実に迷惑をかけている場合が多いわけなんです。
1回ちゃんとしたルールを作って、それをみんなに徹底していただこう
というのがTPSPの目指しているところだし、
最徐行はアイドリングスピード5km以下、徐行は8km以下と決めごとをつくって、
例えば、夢の島マリーナの港内に入る時なんか絶対最徐行じゃないですか。
ちょっとでもアクセルにぎったら、引き波が出るの当たり前なので、
その引き波で迷惑するのがあそこにボート、ヨットを置いている会員の方じゃないですか、
年間料を支払って保管している場所に波を立てて入ってくる水上バイクのビジターが
入ってきたら、そんなのなんで受け入れるんだ、となるじゃないですか。
それをずっと言われ続けてきたんですよ。
TPSPをスタートしてなければ、夢の島マリーナも去年くらいで乗り入れ禁止になっていました。
ちゃんとしたルールを作って、可視化して、それをライダーも自覚し、
またそれを見守っていただく保安部や一般の市民に変わってきたねと、
水上バイクのユーザー変わってきたねと思っていただいて、
それを実行して、し続けて、
これ以上の規制を受けないように、一般の方にも暴走族のイメージから、
やさしく走っている、ルールを守っているライダーなんだなと見てもらえるようになってほしい。

女性ライダーが走っていると
屋形船から手を振ってくれますよ

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ー今、力を入れていることは何ですか?

エムジーマリーンで今、一番力を入れているのは女性ライダーの普及なんですよ。
女性が増えてくれると、絶対にみんな無茶しません、一緒に走っていても。
女性の目線で一緒に走るじゃないですか。
それから、それを見る人たちも女性がやっているマリンスポーツなんだと、
女性ライダーが走っていると屋形船から手を振ってくれますよ。
「楽しそうだね」「がんばってね」と、見る目が変わる。
「女性にも受け入れられるマリンスポーツ」=水上バイクというイメージが大事だと思うんですよ。
女性は力がないですし、ある程度技術も教えてあげないと不安でしょうから、
なるべくまとまって「女子会ツーリング」だったり、インストラクターと一緒に走るツーリングを
増やしたりとか、そうやってサポートしながら女性ライダーの普及をどんどんしていこうとしています。
それが免許にもつながってきて、全国の特殊の平均的な女性のパーセンテージはだいたい15%くらいなんです。
エムジーマリーンはだいたい23%で、4人に1人が女性になっていて、これはすごいことなんですよ。
施設もマリーナとしては、女性が居心地いいように過ごしていただけるように
シャワーや更衣室をリニューアルしたり、女性向きに変えたり
それからレストランとか、憩いのスペースをより充実させたり、
夏場は屋上にもドッグカフェみたいなものを作ってみたり、
女性でも居心地のいいマリーナに変えていこうと、
マリーナというと一部のお金持ちの男性社会というイメージではなくて、
OLの方達でも、レンタルを楽しんでいただいたりとか、
水上バイクを持っていない人を対象としたツーリングに参加していただいたりとか
購入し、保管されている女性オーナーも出てきましたし、
女性を支援していこうと、
そういう方が一人でも多く水辺を走っていただいくと、
ファッショナブルだし、イメージ変わりますよね、それだけで。
そこにエムジーマリーンとしては一番力を入れてますね。

TPSPを受講してくれる人が増えてきている
一気に普及してきました

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もう1つはTPSPの普及。
自主ルールでエムジーマリーンも
TPSPを受講して、ビブスを着ていただかないと
水門から下流(海方向)には行けませんよ、と徹底しています。
行きたい人はTPSPの講習を受けて、カードを提出していただいて、
ビブスを着ていただくというのがマストですから、
新規で水上バイクを買ったとか、レンタル会員に入会した方でも
TPSPを受講しいただかないと、目の前では遊べますけど、海へは出られません。
今度、夢の島マリーナでも、TPSPを受講していないビジターを受け入れませんと、
飴とムチが出てきたので、あちこちのマリーナから出てくる人たちも
TPSPを受講してくれる人が増えてきている。
一気に普及してきました。これは良い傾向で、今度は逆にTPSPをとってビブスを着てて
違反行為をしてしまった場合はどうするのかということで、
これはわかってしまうので、例えばエムジーマリーンで言えば千葉で、
赤のビブスを1番から100番まで持っていて、
貸し出しした番号の方が苦情を受けた場合、誰かが特定できてしまう。
指導しても言う事を聞いていただけない場合、最悪は乗り入れ禁止となってしまう。
まだそういう人はいませんけどね。
TPSPを受けたことにより意識が高くなっていますね。
自分たちは優良ライダーなんだと乗ってくれています。
あえて、ビブスを着たいと言ってくれている人は増えています。
現に、海上保安庁や水上警察の方もTPSPのビブスを認識してくれている。
「TPSPの方ですね」と声を掛けられたとお客さんからも聞いている。
ビブスを着ている人は当然、マリーナで免許証とTPSPの受講修了書提出の義務がありますから
まず無免許の人もいない、不携帯の人もいないわけです。そこは絶対クリアしています。
うちの場合、船検証の掲示も義務づけしています。
周りのマリーナの方も少しづつ、そういう意識になってきてくれていて、
出口、入り口となるマリーナの姿勢をまず正してもらわないといけない。
これから、どんどん増えていくと思います。

迷惑かけたくてかけているんじゃなくて、知らなくてかけている
それがほとんどだと思います

ーその他、ライダーの皆さまに伝えたいことはありますか?

東京湾・東京港・東京の河川というのは、全国で一番航行船の多いところです。
遊漁船もある、商業船も走っている、水上バスも走ってる、屋形船も走ってる、
そんな生活を船でされている営業船の邪魔をするようなことはあってはならないと。
だから、水上バイクというのは東京湾・東京港・東京の河川を
ゲレンデと呼ぶならば、そのゲレンデは自分たちだけのものじゃない、
一番後発な乗り物なので、特にレジャーで楽しんでいるわけですから
営業船の邪魔をしてはいけない。
どんな船に対しても、自ら避航船という意識であってほしい。
これを徹底してほしいんですよね。
自分たちは避けられるからといって、いきなり船の目の前を横切ってみたりとか、
もしくは、抜く時も非常に接近して抜いてみたりとか、
そうすると相手から見ても脅威じゃないですか。
そういうことは苦情にもなるし、水上バイクのイメージの悪さにもつながってくるので、
そういう行為をすると相手から悪いイメージで見られますよってTPSPの講習で教えているんですね。
そういうことをわからないと知らないうちに迷惑をかけている場合があるんですよ。
かけたくてかけているんじゃなくて、知らなくてかけている。
それがほとんどだと思います。
ほとんどのライダーが迷惑かけようと思って走っているわけじゃないですから。
結果、迷惑がかかっちゃっているのは、知識がない、
もしくは、理解が少ない、配慮が足りない、もしくは、気配りが足りない。
そういうことによって相手の不満になるケースが多いと思うんですよね。
とにかく、避航船であるという意識を持つことと、
楽しむなら営業船に絶対迷惑をかけない。

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「音」と「引き波」と「航行ルール」の3セットですね
この3つを守ってもらえれば、水上バイクの印象も大きく変わると思うんですよね

それから音とか騒音ですね。
ノーマルでも10台、15台走ると、音ってこもるので、
川なんかでは、大きい音に聞こえてしまう場合があるんですよ。
音に対してもすごい配慮してね、走ってほしいし、
ましては改造して、マフラーを直菅にして走ってほしくないですね。
隅田川でイベントをやっているのを見ていたら、
そこを横切っていく水上バイクの中に6艇中2艇くらいが直菅だったんですね、
その水上バイクの音を聞いていたら、1km先からでも聞こえてくるんですよね。
これはやっぱり垂直護岸の隅田川なんていうのは、
コンクリートに響いた音が上のほうに音が逃げますから
高層マンションから苦情来るのはこれだなと自分も実感したんですよね。
自分たちはいい音と思っていても、それを聞く人たちは、騒音と思ってしまう。
音に配慮して走ってほしいし、マフラーの改造艇は絶対に走ってほしくないですね。
特に音が反響する場所では。
「音」と「引き波」と「航行ルール」の3セットですね。
この3つを守ってもらえれば、水上バイクの印象も大きく変わると思うんですよね。
これをTPSPでも特にうたってます。
最低限の知識をもって、他船に配慮した走りをしていれば、苦情に絶対ならないはずなんですよ。
水上バイクは無法者だと思われるのが悔しいと、イメージを変えたいと思ってくれている人が
TPSPを率先して受けているのが現実ですよ。
そう人を増やしていきたい。
みんながそういう意識だったら、悪い方向にはならないですよね。

GOLD RIDER vol.01 :齋藤紀幸 エムジーマリーン PW安全協会 TPSP Tokyo Pwc Safety Project

エムジーマリーン | http://www.mgmarine.co.jp/
PW安全協会 | http://www.pwsa-jp.com/
TPSP Tokyo Pwc Safety Project | http://www.tpsp.jp/

 

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